目次
まえがき(初版)
まえがき(第2版)
現在のポーランドと周辺諸国
第Ⅰ部 〈通史篇1〉中世から近世にかけて
1 ポーランド年代記から見る、ポーランド国家建設伝承の意義――ヨーロッパ諸国の国家建設とキリスト教との相関の一典型として
2 ピャスト朝からヤギェウォ朝へ――中世のポーランド
3 キリスト教への改宗から「カトリック改革」まで――カトリック教を基軸とする国家社会の建設
4 近世ジェチポスポリタの多様性――多言語・多宗教・多民族からなる貴族の共和国
5 東西キリスト教の境界域にて――ポーランド・リトアニアの教会合同
6 17世紀の戦乱――ポーランド・リトアニア国家、領土縮小への序章
[コラム1]王に愛された美女――ジグムント二世アウグストとバルバラ・ラジヴィウヴナ
[コラム2]死者の肖像――バロック期ポーランドを映す「棺の肖像画」
[コラム3]「真の歴史画」で民族を導く――ヤン・マテイコが《スカルガの説教》で実践した「史実の総体理論」
第Ⅱ部 〈通史篇2〉近世から近代にかけて
7 近世ポーランドの地方社会と官職――クラシツキ家の例を中心に
8 国王スタニスワフ・アウグストと18世紀後半のポーランド――啓蒙主義、共和国再建、国家滅亡とともに生きる
9 国民教育委員会(1773年~1794年)――「ヨーロッパ初の『文部省』」
10 西ヨーロッパとの融合――共和国期のポーランド王室の宮廷美術と美術収集
[コラム4]ベルナルド・ベロットとワルシャワ王宮「カナレットの間」
11 18世紀の国制改革と一七九一年五月三日憲法――近世共和政改革の行方
12 ポーランド・リトアニア共和国の分割――大国はなぜ分割されたか
13 ナポレオン時代のポーランド――独立のための協力か、フランスによる搾取か
14 ポーランド王国と十一月蜂起――政治的ロマン主義の幕開け
15 国家滅亡期のカトリック教会――「三国分割」時代の18世紀末~20世紀初め
16 中世から近代前半にかけての都市ワルシャワの歴史――宮廷都市からブルジョワ都市へ
[コラム5]ワルシャワの街路――名称変更の歴史から
17 1830年代の合衆国亡命への道――ポーランド人亡命者に残されたもう一つの選択肢
18 一月蜂起と社会の変化――ポーランド独立運動の転換点
19 ポーランド人の民族運動と女性解放運動――キュリー夫人によせて
20 ウーチ――都市史から眺望する分割時代
第Ⅲ部 〈通史篇3〉両大戦間期
21 ロマン・ドモフスキ――建国の父か、反ユダヤ主義者か
[コラム6」独立記念日のデモに見る急進右派の抬頭――ドモフスキの復権
22 ユゼフ・ピウスツキ――英雄か、独裁者か
23 両大戦間期ポーランドの政治――「議会専横」をめぐって
24 両大戦間期の経済――停滞と開発の試み
25 ユダヤ人政治運動――民族の自立と共存を目指して
26 反ユダヤ主義――追い詰められるユダヤ人
[コラム7]ポーランドの国境画定――パリ講和会議から国際連盟理事会まで
第Ⅳ部 〈通史篇4〉第二次世界大戦
27 占領下のポーランド――ドイツとソ連の占領政策
28 カティン――真実を求める最終章なき闘い
29 イェドヴァブネ事件――ポーランド史の中の加害の歴史
30 ナチ・ドイツの強制収容所――ナチ占領下のユダヤ人の犠牲とポーランド人の犠牲
31 ワルシャワ・ゲットーの記録――歴史家リンゲルブルムの遺志とは
[コラム8]ロヴェツキ逮捕の周辺――1943年夏、亡命政府陣営の転換点
32 ワルシャワ蜂起――スターリンは蜂起にどう対処したか
第Ⅴ部 〈通史篇5〉ポーランド人民共和国
33 戦後共産政権の成立――「PRL」の起源
34 人民民主主義の実験――新しい体制への夢と現実
35 スターリニズムの時代――一元的支配体制の確立と動揺
36 スターリン期の経済――工業化と農業集団化の強行
[コラム9]ドイツ人「追放」問題
37 ポーランド現代史におけるウクライナ人――「ヴォウィンの悲劇」と「ヴィスワ作戦」
38 ゴムウカの時代――十月の春から三月事件へ
39 ゴムウカ期の経済――第二次工業化の行き詰まり
40 ギェレク期の経済――借款による高度成長と挫折
41 「連帯」運動――大いなる希望と挫折
42 戒厳令から円卓会議へ――社会主義体制終焉の始まり
[コラム10」1989年体制転換とロック音楽――新しい時代への転回の原動力
第Ⅵ部 〈通史篇6〉体制転換以降
43 バルツェロヴィチ・プランと体制転換――自由主義への苦難の門出
44 現代ポーランド国家の国境線――カーゾン線とオーダー・ナイセ線
45 体制転換期の政治変動――揺れる政局、揺るがぬ政策
46 EU加盟――ヨーロッパ回帰の期待と不安
47 現代ポーランドの光と影――国のあり方をめぐる二大勢力の対抗?
48 国民記憶院(IPN)――記憶の国営企業
49 体制転換後に新たな社会体制下で活動するカトリック教会――聖ヨハネ・パウロ二世の「残像」に生きる教会
第Ⅶ部 〈テーマ篇1〉ポーランド文化史
50 ポーランドの近代美術――19世紀末から20世紀初頭、前衛の胎動と進展
[コラム11]「若きポーランド」の時代――花ひらく世紀末芸術
[コラム12]社会主義時代の亡命作家たち――亡命慣れしたポーランド人
51 カルパティア山系の少数民族ルシン――ウェムコとボイコ
52 ギュンター・グラス――ポーランドにおける受容
[コラム13]「方言」から「言語」へ――カシュブ語の標準化の歴史
[コラム14]シベリアにある「ポーランド」の歴史――イルクーツク州ヴェルシナ村
[コラム15]クレスィの歴史と現在――東部辺境地域における多言語多文化社会
[コラム16]ポーランド人の名字の歴史――ノヴァク、コヴァルスキ、ヴィシニェフスキ、ヴイチク、コヴァルチク
第Ⅷ部 〈テーマ篇2〉ポーランドと日本
53 西欧文明とポーランド――西欧文明の境界となった国
54 日本・ポーランド交流史――逆境の中で育まれた友好関係
55 日本におけるポーランド文学・語学研究の先達――木村彰一、吉上昭三、米川和夫、工藤幸雄
56 日本におけるポーランド史研究の先達――梅田良忠と阪東宏
[コラム17]『灰とダイヤモンド』を観る三島由紀夫――日本におけるポーランド映画受容の一片
[コラム18]『クォ・ヴァディス』を読む野上彌生子――日本におけるポーランド文学受容の一片
ポーランドの歴史を知るための文献ガイド
Ⅰ ブックガイド
Ⅱ ポーランドの歴史をさらに知るための参考文献
ポーランド史略年表
前書きなど
まえがき(第2版)
本書の初版が上梓されたのは2020年9月であった。「ポスト・トゥルース」の時代の到来とも言われた2010年代後半以降、世界の各地で政治的・社会的な分断や言論の分極化が観察されていたが、それはポーランドでも同様だった。2020年代を迎えたポーランド社会は、政治手法をめぐって、公共メディアのあり方をめぐって、EUをめぐって、移民をめぐって、LGBTQをめぐって、歴史認識をめぐってなど、さまざまなトピックを争点にさまざまな分断を抱えていた。
このような状況下でポーランドとその歴史を知るために編まれた本書では、事実と言説とを截然と区別することがことのほか求められた。学術的な知見に照らして問題があると思われるような言説を、あたかも事実であるかのように扱っていないか。特定の集団に対する偏見と差別を助長するかのような陰謀論まがいの言説を、あたかもポーランドで実際にそうであった(そうである)かのように記述していないか。こうした自己点検と相互批判を複数の初版執筆者の間で重ねた先に、翌2021年から、内容と構成のブラッシュアップを図った改訂版を刊行するための作業が3名の編者を中心に始まった。それから今日までの間、2022年のロシアによるウクライナ侵攻の開始や2023年のポーランドにおける8年ぶりの政権交代など、ポーランドを取り巻く環境の小さからぬ変化にも目をとめながら、この度ようやく第2版を刊行できる運びとなった。
第2版は、近世(16~18世紀)と近・現代(19~20世紀)でそれぞれ2章、日本=ポーランド関係で1章、コラムとして近代美術史に関する1編とポーランドの国境線に関する1編を新たに加え、時代的なバランスやジャンルの幅という点でより充実したものとなった。また、章立てに関しても、中世から現代にいたる〈通史篇〉を中心とする構成へと改めた。初版で〈総論篇〉とされていた第Ⅰ部を削ったのは、多様で多元的なポーランド史を総論の形でわずか数章に集約させることに積極的な意義を見出せなかったからである。
(…中略…)
ところで、日本におけるポーランド史研究の草分けとして、本書では梅田良忠と阪東宏が取り上げられている。両氏のパイオニアとしての意義が大きいことはもちろんであるが、もとより、日本におけるポーランド史研究のパイオニアが両氏にとどまるわけではない。本書第2版の執筆者以外でも、(故)中山昭吉、伊東孝之、松川克彦、小森田秋夫、井内敏夫、(故)早坂眞理、藤井和夫、川名隆史といった方々が大きな業績を残されている。これらの方々の著作に関しても「ポーランドの歴史を知るための文献ガイド」にあたってぜひ参照されたい。
(…後略…)